ブリは天然ものと養殖もので何が違うの?
ブリの天然と養殖。この違いをWebで調べると結構適当なこと言ってない・・・?と感じることが多い。
例えば↓こんな。
- 天然ものより養殖ものの方が美味しいとか価格が高いとか。
- 養殖の方が通年美味しく食べられるけど天然物は冬しか脂が乗っていなくてパサパサしてて美味しくないとか。
でもそれって本当なんですかね・・・?って思っちゃったわけっすよ。
なぜかというと、今まで僕が食べてきた経験とあんまり符合しない。
そもそも。天然ものの旬は地域によって違うし個体差もあるので一概に天然はこうだと断言することはできない。
養殖ものだってブランドを付けるくらいの高級仕立てなブリもあれば一般流通に大量にのせるような庶民派ブリもあるんだから味わいは大きく違う。
・・・ということでWeb上でまとめられている天然ブリと養殖ブリの違いを改めて調べてみることにした。
そのうえで、今回の記事では僕がこれまで色んなブリを食べてきた経験も基に、天然ブリと養殖ブリそれぞれ食材としてどんな特徴や違いがあるのか、6つの観点でまとめてみた。
この記事はこんな方向け
- ブリって天然と養殖で何が違うのか知っておきたい
- 天然と養殖それぞれの味わいの特徴を理解したうえで調理したい
天然と養殖の6つの違い
①価格
まずは価格から。安い順に並べると、↓こんな感じ。
- 一般的なスーパーに並ぶ無名の天然≒一般的なスーパーに並ぶ無名養殖
- ブランドのついた養殖
- ブランドのついた天然
スーパーに売っていて特段ブランド名のついてないブリは天然と養殖で絶対にどちらかの方が高いということは無い。
天然より養殖が高いとか、ものが良いとかは考えない方が良い。
ブランドものかどうかで価格は大きく変わるし、ブランド力自体による価格差もあるので価格が純粋に美味しさを反映してるものってわけでもない。
②臭いや香り
続いて匂いについて。
香りは多種多様なのでまずは天然と養殖で分かりやすい「臭い」を挙げてみる。
- 天然・・・身に血っぽい臭いが出ることがある(脱血不足によるものと思う)
- 養殖・・・脂に養殖ブリ特有の臭いがありがち
天然で最近食べたのはスーパーの天然ブリ、佐渡島ぶり、ひみ寒ぶり。スーパーの天然ブリはやや血生臭いように感じることがあるけど、佐渡島ぶりとひみ寒ぶりはこの臭いは無かった。締め方の違いや鮮度の違いからくるものと思ってる。
ちなみにこの血生臭い感じは養殖ブリではほとんど感じたことがない。出荷時に血抜きや神経締めが施されるし、その後の鮮度管理も天然ものよりコントロールしやすいのかも。
養殖はいままでスーパーの養殖ブリ、かぼすブリ、平戸なつ香ブリ、美人鰤を食べてきたが大小はあれどいずれも一口で養殖と分かる脂の臭いを感じた。
次に「香り」、これは天然・養殖に限らず結構個性が出てくる要素。
柑橘を餌に加えた養殖ブリは加熱すると柑橘のようなすっきりした香りが出てくる。これは天然では出せない香りだと思う。また、美人鰤はさばいてるときもお酒のような梨のようなフルーティな香りがあった。
天然ブリでは、佐渡島ぶりは煮込むと何とも言えない独特の美味しそうな香りが出てきた。ブリを煮込んでるはずなのに臭みのない豚肉のような香り。これは養殖ブリでは感じたことのない香り。そしてひみ寒ぶりはどことなく上品な肝を思わせるような香りが脂にあった。
③食感
- 天然・・・引き締まっている
- 養殖・・・柔らかい
これはブランド問わず共通していて、おおよそ当てはまると思う。一般的によく言われている通り「運動量の違い」ってやつかと。
ただ、身が引き締まっているからパサつきやすいというわけじゃない。パサつきは脂ののり具合によるところが大きい。脂がそんなにのっていなかった佐渡島ブリは加熱すると見事にパサついたし、天然ものでも脂がしっかりのっているひみ寒ぶりは引き締まった身質でジューシーという美味しさを持っていた。
養殖ブリはどれも身が柔らかい。安定して脂がしっかりのっていることからも、加熱しすぎても硬くなることを心配せずに食べることができる点は養殖ブリの強みだと思う。
④その1:脂ののり具合
ブリが好きな人が一番気になるのは脂の乗りぐあいかも。
- 天然・・・個体差があって約6kgを超えてくると脂が乗りだすことが多い
- 養殖・・・安定してやばい
養殖は食べてきたブリすべてがもーのすごい脂だったのでこれ以上言うことが無い(笑)。安定して脂を楽しむことができる。
一方の天然ブリは個体差が大きいので要注意。旬を迎えたかどうかというのもあるし、サイズによって左右されることも多い。
今まで食べてきた天然ブリでは、5kgくらいまでのもので脂がしっかりのっているブリを食べた記憶が無い。ブリと呼んで差し支えないレベルの脂がのってくるのは6kgあたりから徐々に・・・という印象がある。
ちなみにひみ寒ぶりは6kg以上が基準の一つになっている。
スーパーに並ぶ天然もので「パサパサしてる」とか言われるのは重さが微妙なラインだったり体長が長いけど太ってないブリ(ワラサ)たちなのかも。
④その2:切り身の見た目で天然と養殖を見分けるのは結構難易度高い
よく「養殖は脂がしっかり回っているから身が白い」と切り身の色合いが紹介されて、この色合いで天然と見分けられるんだぜ的な情報を目にする。
もちろん、天然ぽいな~養殖ぽいな~とか雰囲気は感じるけど僕は「これを見れば絶対分かる!!」とは言えない。言える人はそれだけの経験を積んだその人だから分かるか、それか知ったかぶりな人じゃね?と邪推してしまう。
確かに、なんとなく身が柔らかそうで淡い色合いをしていて白ければ養殖であることが多い。ただ脂MAXの状態になった最高の天然ブリの腹側の身も白いので腹身だけではちょっと難しいかも。
背側の切り身を見て赤みが強ければ天然もの、白ければ養殖ものであることが多い。そして白くても血合いが鮮やかで濃い色のものは天然であることが多い。
天然ブリと養殖ブリの刺身画像を列挙してみるので試しに見比べてみてほしい。なんとなく天然ははっきりした色合いで養殖は穏やかな色合い・・ということは感じると思うけど、初見でどちらかを断定するには結構難易度が高い。
↓天然(佐渡島)
↓養殖(美人鰤)
↓天然(氷見)
↓養殖(平戸なつ香ブリ)
いやあ、難しいっす・・・
⑤旬
- 天然・・・秋~春
- 養殖・・・どちらかというと冬(夏も可!!)
まず、天然ブリの旬は12月~1月とよく聞くけど本当はもうちょい広い期間。
12月~1月ってのは、多分日本海の一部エリア(それこそ氷見のあたり)のみの旬の時期だと思う。例年のひみ寒ぶり宣言の期間がこのあたりなので。
実際の天然ブリの旬は産地によってずれていくので結構長い。
最初に北海道あたりで脂ののったブリが9月中旬から獲れ始めるのを皮切りに、その後日本海側で2月~3月、太平洋側に移って4月~5月あたりまでと産地をずらしながら旬の時期は移動していく。
あまり知られていないだろうけど、例えば室戸沖の春の天然ブリはしっかり美味い。高知の3月~5月のプライドフィッシュになっているほどで、↓こんな感じに丸々と太ったブリが食べられる。
一方の養殖ブリがすごいのは産卵時期をずらすことで夏に旬を持ってきているブリ(例えば黒瀬ブリとか)も存在するところ。
年間通して安定した味を供給できるのは養殖の特長だけど、まさかの夏を美味しさのMAXに調整されたブリも食べることができるってのは養殖ブリだけ。
黒瀬ブリは結構すごいことやってるみたい。
⑥寄生虫(ブリ糸状虫)
- 天然・・・地域や水温によっては結構いる
- 養殖・・・ほとんど聞かない
食べても害は無いと言われてるけど不思議と食欲をなくすぶり糸状虫。養殖でも100%無いとは言えないけど天然の方が遭遇確率が高いのは事実。
相模湾で釣り上げたワラサからは今のところ100%の確率でブリ糸状虫を発見している。一方で養殖ブリから、というのは今まで見たことが無い。
まとめ
ということで、天然と養殖で比較になりそうな項目をまとめてみるとこんな感じ。
比較項目 | 天然 | 養殖 |
臭い | 血生臭さが出てるのも見かける | 養殖特有の脂の臭いがあることが多め |
食感 | 引き締まっている | 柔らかい |
脂 | 個体差あり | 安定してやばいぜ! |
旬 | 秋~春 | 夏に美味しくした品種(ブランド)があるよ! |
寄生虫 | いることもあるよ! | ほとんどいないよ! |
価格や香りはブランドで変わるので単純な比較はできないし、臭いや食感、脂もあくまで「こんな傾向があると思うよ」という程度に捉えてもらった方が安全。
養殖でも「身が引き締まって良い食感」としているブランドブリもあるし、天然は脂ののり具合に個体差があるとはいっても、ひみ寒ぶりのようなブランドブリは基準を設けているのでそこまで怖がる必要も無いかな、と。
なので、天然ブリと養殖ブリは大体上の表みたいな傾向があるんだな~と頭の片隅に入れたうえでどんなブリを食べたいかとお財布の状況で食べてみたいブリを選ぶと良いと思う。
ちなみに僕みたいに釣りを良くするとかで普段から天然&高鮮度&活〆の魚を食べ慣れている人は養殖の臭いが気になるかもなので天然ブリが良いかも。(海外輸出しているブランドブリもあるくらいなので、大半の人は脂の臭いは気にならないのかも・・・。)
逆に普段からそんなに多く魚を食べ慣れているわけではないという人や、ほんの少しだけブリを食べたいという人は養殖ブランドブリに挑戦してみるのもオススメ。とんでもない脂ののり具合に圧倒されるのでわかりやすく「美味い!!」と感じやすい。
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