家庭で作れる塩ブリってどんな作り方があるの?
伝統的なものは「塩ブリ」「巻鰤」とか
そもそも郷土食としての塩ブリといえば富山湾など日本海側で漁獲されたブリを塩して岐阜県の高山や長野県の松本(あたりだったか?)周辺まで輸送していたものが有名。この輸送ルートはブリ街道と呼ばれている。ブリを遠隔地まで運ぶために塩して保存食にしたものがで、そのブリをどうやって食べるかと言うとそのまま焼いて食べることが多い。
で、「巻鰤」という上位互換みたいな呼び名の能登地方の保存食もある。塩ブリは丸のまま塩して風乾して運ばれるイメージが強いのに対して、巻鰤は柵が藁に巻かれた状態で運ばれる。
これはブリの柵を10日以上塩に漬け込み、塩抜きしたうえでがっつり藁で巻いて乾かし、保存性を高めたもの。藁で巻くというのが高難易度なので初心者が作るのは無理っぽい。
見た目も格好良いので取り寄せて少しずつ味わう方が良いかも。
今回は塩ブリを3種類の作り方で作ってみる
で、秋は塩カツオを作ってみたので冬ならブリでしょ!と、家庭でも作れると聞いたことがある「塩ブリ」を作ってみようと思い立ったのが今回のきっかけ。
とはいえ、もちろん藁なんて持ってないし伝統食として作られている塩ブリの正式な製法は押さえてないしでどうやって作るものか全く知らない・・・
ネットで調べてみても結構思い思いのレシピが溢れていて「これが正統派の塩ブリだ!!」となるような作り方も見つからない。
そこで今回は、調べてみておおまかに見えてきた塩ブリの作り方3種類をすべて試してみて、それぞれどんなもんか検証してみることにした。
ちなみに作り方は切り身や柵に塩をして寝かせるのが主流みたいで、大きくは3種類。
- 切り身に多めの塩をして、キッチンペーパー+ラップで包んで数日寝かせる
- 柵を塩に埋めて、水分が出たら水分を捨てながら数日寝かせる
- 柵を塩に埋めてある程度水分が出たらセロハンで包んで数日寝かせる
前回の塩カツオでは皮目や表面に臭いが出やすいことが分かったので、そのあたりも踏まえて作って食べ比べてみる。
やっぱり気になるのは「作りやすさ」と「美味しさ」。この2つの観点で比較してみたい。
今回の塩ブリに使ったブリはこんなの
今回使用したのは新潟県産の天然物で約5kg。半身の状態でも分かる通りそこまで太ってはいない個体で、脂ののり具合はワラサレベル。
つまりサッパリしていてあまりブリっぽくない素材を使った。
本当は脂もっとのりまくってるのかと思ってたんだけどね・・・でも養殖ブリでは感じたことのない濃い旨味を持っていて中々馬鹿にはできないお味です。
ちなみに水揚げされてから3日目の状態。脳天締め、脱血処理も丁寧に行われたもの。
この記事はこんな方向け
と、いうことで・・今回の記事は家庭で作れる塩ブリの作り方比較検証という内容になっているので↓こんな需要には応えられそうかな?と思います。
- 塩ブリ、作ってみたいです!
- ブリが食べきれない量あるんだけど、塩して保存しておきたい。
- 鮭以外の魚で塩鮭みたいなやつ食べてみたい。
- 魚の生ハム、作ってみたい!
塩ブリパターン①:切り身に塩して寝かせる
作り方
まずは切り身を使う方法で作ってみる。
柵どりしたものをスーパーで売っているくらいの大きさに切りつけて、結構豪快に塩をすり込む。焼き魚用に塩する感じじゃなくて、文字通り「すり込む」ことができるくらいに結構多めに。
大雑把で良いので↓これくらいが目安。
で、塩をすりこんだら切り身一つずつをすぐにキッチンペーパーに包んで、さらにラップで包む。身から結構水が出てくるので、キッチンペーパーが薄いなら2枚で包んだ方が良い。
冷蔵庫に入れたら放置するだけ。キッチンペーパーも交換しない。
2日も放置すれば↓こんな感じになり、塩ブリっぽくなってくるので後は焼いて食べるだけ。
2日目:食感が早くも変わる
2日寝かせた切り身の状態のものを早速焼いて食べてみる。
↓見た目は普通に焼き魚・・・一口食べてみると・・・?
あれ、これ、、、塩鮭じゃね?
うん、まちがいなく塩鮭の鰤バージョンだ。
でも食感が塩焼きとは全く違う。なんかシャキシャキした感じで面白い。多分これが塩してしばらく寝かせた魚しか出せない味なんだろうなー。
とりあえずご飯ほしいな。なかなかのしょっぱさだわ。
あとほんの少し臭いがある。もう少し乾燥を進めた方が良いかも?
塩した後に出てくる水分に色がついてるとあの匂いが出やすいから、水はこまめに捨ててつど新しい塩をした方が良いような気がしてきた。
3日目:塩ブリっぽい香りに変化
2日目で感じた匂いがほぼなくなり、独特の「香り」が出てきた。
塩鮭にもある香りなんだけど、鮭の香りじゃなくて強めの塩である程度時間を置いた魚の熟成された香り。
ほほう・・・これは結構期待できるかも!
焼いて食べてみると・・・
お、美味いじゃんか。
あー・・・これ2日よりも分かりやすくしっかり美味くなってるわ。
おん、これ美味いな!!美味しさがじわじわやってくるw
2日目に感じた臭いは全くないし、独特の塩鮭に似た香りもあるしでご飯が進む美味しさ。
寝かせ方が浅いと臭いがあるけど3日寝かせると美味しそうな独特の香りに変わるみたいだ。切り身で塩ブリにするなら3日は食べるの我慢ってことだな。
しかしこれは美味い。干物や塩焼きとはまた違った美味さ。
5日目以降:3日目とさほど風味は変わらず塩気が強まる
3日目でしっかり美味しくなってたのでさらに寝かせるともう少し味わいが変わるのかも確認してみた。3日目でも十分ご飯のおかずになるのでここで冷凍に回しても良かったんだけどもうちょっと美味しくなるかもしれないので・・・
冷蔵庫から出してみた見た目は3日目と全く変わらず。同じように2日目の臭いは無し。塩鮭みたいな香りが出ている。
焼いて食べてみると、おー、うん。うん、問題なく食べられるな。美味い。あ、焼きが甘いところはちょっと臭いを感じる。
そして結構しょっぱい。
3日目までの切り身とは塩加減が少し変わっちゃったか。それか、長時間キッチンペーパーで包んでいたので3日目よりさらに水分が抜けて塩分濃度が高まったのかも。
こうなったら大根おろしかなー?と思って試しに一緒にたべてみたら塩気も和らいだし臭いも消えた。
この食べ方はアリだ。塩ブリを焼いて大根おろしを添えると塩気も丁度良く臭みも感じない。
ちなみにこのあと6日、7日と寝かせ続けて食べ比べてみたけど、味わいはさほど変わらず。
3日~5日寝かせたらあとは冷凍しても良さそう。
塩ブリパターン②:柵を塩に埋める
作り方
この作り方は塩カツオの時と似ていて、大量の塩に埋め込んでしまえ!という豪快なもの。
塩をすり込んだうえでしばらく放置し、水分が出てきたら捨てて柵も流水で軽く洗い、水気を拭き取って再度塩をすり込んで放置・・・・というサイクルを4回ほど繰り返す。
↓まずは塩をすり込んで埋めて・・・
水が出てくるので捨てて洗って・・・(この色付きの水は結構臭いがある)
また塩をして一晩放置して・・・
こんな感じの作業を水が出てこなくなるまで続けると魚っぽい臭いが無くなってきて、塩して乾燥させた水産加工品と言う感じの香りに変わってくる。
そのまま10日目まで寝かせ続ける。
10日目:塩はかなり辛いけど味わい深い美味しさ
そして10日寝かせてみたものがこちら。最後に流水で塩を洗い流し、キッチンペーパーでしっかり水気を取って完成。
まず臭いは・・・おや、無いな。
うっすら塩鮭っぽい香りもあるけどこれといった臭みや香りが無く非常に薄い印象。でも作り方は塩カツオの時と似てるので、臭いに関して油断はまだできない。
見た目はしっかり水分が抜けていて新巻き鮭みたいな見た目に近い。
スライスしてみると中は深い赤ワイン色と茶色。
薄くスライスして焼いたものと、表面を薄ーくトリミングしたうえで日本酒+水1:1で少し煮たものを用意して食べてみる。
・・・おぉ!!美味いじゃん!!!!
焼いてみた方は案の定、塩が白く析出してくるほどにしょっぱいけど塩かつおのような微かな魚臭さは無さげ?あ、いや、ちょっとなんか感じた・・・あー、皮目か。
皮を取り除いて改めて食べてみると・・いいね、美味い!!
続いて煮た方も食べてみると、焼いた方よりさらに美味い!!
日本酒の香りがついてるしこれこそ臭みがマジでゼロ。さらにしょっぱさの中にブリの旨味を感じる。
良くほぐしてご飯に混ぜ込んで食べてみたらさらに美味い。
塩気が丁度良くなるし塩ブリのなんとも言えない美味しさとほんのり日本酒の香りがご飯との相性抜群。寒い日の朝に海苔も散らしてお茶漬けにしたら幸せになりそうなお味な気がする。
塩ブリパターン③:柵を塩に埋めた後セロハンで脱水する
作り方
最後の塩ブリはパターン②と似ているけど、脱水の仕方と寝かせる期間が異なる。
この作り方は魚の生ハムとして紹介されていたものを少しアレンジしてみたもの。見た目はラップみたいだけど透湿効果があるのが食品用セロハンの特徴で、外側からの雑菌の付着を防ぎ、同時に乾燥を進めることができる。
まずはパターン②と同じように塩をまぶしたり塩に埋めたりして一晩放置し水分を出す。
出てきた水分を捨てて新しい塩に再度埋めてもう一晩したら、流水で洗い流して水気を取り、食品用セロハンで包んで冷蔵庫へ。
ちょっと脱水を早めたいので下に砂糖をしき、上からも砂糖をかぶせる。浸透圧により身から砂糖へ水分が抜けていく。ピチットシートと同じ作用があるので経済的に脱水したい場合はオススメ。
この状態で14日寝かせるとこんな感じになる。鮭とばならぬ鰤とば(笑)変な香りは無くジャーキーみたいに安全そうな見た目だ。
14日目
参考にしたレシピではそのまま食べたりしていたので試しに生で食べてみる。
すこーし厚めに切りつけてみると、結構しっとりした感じ。鮭とばほど固すぎと言う感じがあまりしないな。
香りのほうも・・・鮭とばっぽい感じで問題無さげ。
皮を剥いで食べてみるとなかなか乙な味。あーなるほど、確かに生ハムと言われれば生ハムかも。塩気は結構強くて、鮭とばよりはしっとりしていてお酒と相性良さそう。
そこまで驚きのある味ってわけではないけどこれは確かに美味い。
ちなみに皮目や表面は微かに臭いを感じるのでトリミングして食べた方が美味しい。
生で食べるならトリミングして薄ーくスライスして食べるのが良いかな。あまりたくさんの量を口いっぱいにほおばって食べるようなものではないみたい。
続いてトリミングしたうえで軽く焼いて食べてみたら食感や風味がパターン②の味わいとかなり似ていた。と言うか酷似していた。焼いて水分がさらに抜けたことでパターン②の状態に近づいたのかもしれない。
せっかくセロハンで2週間近くもかけて作るものなので、もう少し味噌風味とかつけてみても面白そう。砂糖で脱水するところを味噌に変えてみるとか、工夫してみるとなんか美味しい発酵食品になるポテンシャルを感じる塩ブリになった。
まとめ
今回は2週間近くかけて3種類の塩ブリを作って、それぞれ食べ比べてみた。
作りやすさなら切り身にして寝かせるタイプ、味わいを求めるなら10日間寝かせるタイプが良さげな印象だ。
一番手軽に作るなら「切り身に塩して寝かせる」作り方がオススメ
切り身に塩をして寝かせるタイプ・・・塩、キッチンペーパー、ラップと一般的なものだけで3日寝かせれば完成する手軽さがメリット。寝かせる期間も短いので雑菌が繁殖するリスクも他と比べれば小さいし、短期間でもしっかり「塩をして寝かせた魚」としての美味しさが出てきていたので優秀な塩ブリだと思う。
柵を塩に埋めて何回も水を捨てて洗ってまた塩をしてというタイプ・・・毎日様子を見る必要があるのと、塩を多めに使う必要があるので少し手間暇がかかる印象。10日間空気にさらすのでちゃんと脱水できないと腐敗するリスクもあり、注意した方が良い。
セロハンを使って長期間寝かせるタイプ・・・そもそもセロハンを持っていないとトライできない。コツを押さえればピチットシートいらずで色々な食品の脱水ができるようになるので持っていれば便利な道具だけど、ハードルが一番高い作り方だと思う。腐敗のリスクはやっぱりあるのでこの作り方も衛生面には十分気を付けて作った方が良い。
保存食としての塩ブリを味わうなら10日寝かせる作り方がオススメ
切り身で作る塩ブリも十分塩焼きや干物とは違う味わいを楽しめるけど、「これが・・・塩ブリってやつか・・・!!!」という感じを求めるなら10日寝かせたものにチャレンジしてみても良いと思う。
超濃い塩味と寝かせた魚の持つ深い旨味はまさに「塩鰤」。
がっつり量を食べるものじゃなくて少しずつ酒のつまみにしたり、ご飯に混ぜ込んでみたりお茶漬けにしてみたり、という食べ方で文句なしに美味しい。
セロハンを使うとしょっぱさや乾燥度合いのコントロールができるかも
長期間寝かせることによる風味はセロハンに包んで寝かせるタイプで味わえる。
セロハンを使った作り方はピチットシートのように浸透圧で脱水できるので、塩ブリの塩分濃度を抑えたまま乾燥熟成させることができるし、砂糖をまぶすかどうかで乾燥度合いも丁寧にコントロールできるのがメリット。
慣れてきたらセロハンを使った作り方で塩ブリの美味しさがもう一段階引き上げられるかもしれない。
3種類の作り方を3つの観点で比べてみると・・・
ということで、3つの作り方を「作りやすさ」「美味しさ」「安全さ」(魚の切り身を10日以上寝かせるので安全さってどんなもんなの?という観点も加えてみた)というポイントで比べてみると↓こんな感じになった。
作り方 | 作りやすさ | 美味しさ | 安全さ |
切り身に塩して寝かせる | ◎(3日以上) | 〇(≒濃いめの塩鮭) | 〇 |
柵を塩に埋める | 〇(10日以上) | 〇(≒塩カツオ) | △ |
塩に埋めた後セロハン | △(14日以上) | 〇(≒塩カツオ) | △ |
どんな食べ方をしたいか、どれだけ手軽に作りたいか、どれだけ安全性が気になるか(気を配れるか)、で作り方を選ぶと良いと思う。
- 手軽に作れて身自体をちゃんと食べたいなら「切り身に塩して3日ほど寝かせる」。
- 伝統食っぽい塩ブリを食べたいなら塩に埋めて何回か洗い替えしながら10日ほど寝かせる。
- 生ハムのような味わいを求めてしっとりした感じで食べたいならセロハンを使ってみる。
と言った感じだ。
衛生面をしっかりケアできるならどの作り方でも問題なく美味しい塩ブリを作れると思うので、塩ブリが気になってる人や食べきれない量のブリ・ワラサを入手した人はぜひチャンレジしてみてほしい!!
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