カツオは血抜きしない方が美味しいって本当?【血抜きの効果と方法を詳細解説】

気になること

カツオの血抜きに効果はあるのか調べてみた

2週間後には初めてのカツオ釣りに行くことになった!!

ということで、カツオの釣り方の他に釣り上げた後、どんな手当てが必要なのかを調べてみている。

のだけれど…どうもネットで調べていてよく目にするのは「血抜きした方が美味しいのかどうか」について、これといった結論が出てないみたい。

カツオの血抜きには大きく2つの意見があるようで、「カツオは血抜きしない方が美味しい」派と「カツオは血抜きした方が美味しい」派に分かれる。

うーん、カツオはなんだか神経締めとか血抜きとかやっておいた方が良いイメージはあるんだけど、、個人的には癖のない味の方が好きなのでおそらくカツオも血抜きした方が美味しい…のだと思うんだけど、、どうなんだろう?

…ということで、今回はカツオは血抜きしない方が美味しいのか、それともやっぱり血抜きした方が美味しいのか調べてみた。

「実際にやってみた」だと個人の感想になるので、カツオについての研究論文を何点か読んでみたところ…さくっと結論から言うと、カツオは血抜きした方が美味しいと感じる人が「すごく」多い。

参照した研究論文はやっぱり論文なだけあって取っ付きづらいので、カツオを血抜きや神経締めすることにより具体的にどんな効果があるのか、できるだけわかりやすく解説したい。

また、神経締めによる意外なメリットもあることがわかったのであわせて紹介する。

この記事はこんな方向け

  • 釣ったカツオは血抜きしない方が良いのかどうかわからず悩んでいる
  • 血抜きの効果を科学的に検証した結果を知りたい!
  • カツオの活け締めや血抜きの仕方が人や船によって違うのでどんな方法が適切なのか知りたい!

参考文献

今回参考にしたのはこちらの2点の研究。いずれも水産技術に関する研究だ。

  1. 寺山誠人. 活けしめ脱血によるカツオなどの品質向上に関する研究. 宮崎県水産試験場研究報告 2004
  2. 平塚誠一, 羽田好孝, 小泉鏡子. 脱血処理がカツオの臭い成分に及ぼす影響. 静岡県水産技術研究所 2015

カツオは血抜きすることで3つの効果が得られる

今回調べた文献によると、カツオを血抜きすることにより3つの効果が出ることが分かった

「活けしめ脱血によるカツオなどの品質向上に関する研究」では、エラ上部を切りつけ延髄まで切断して血抜きしたカツオや、自動活け締め機を使って血抜きしたカツオに対し、一般消費者と市場関係者両方に対して官能検査を実施している。

どちらの官能検査も、血抜きした方が色、臭い、 味いずれにおいても優れているという結果だった。

血抜き効果1.色合いが鮮やかになる

血抜きをすると、しない場合より色合いが鮮やかになるらしい。

また、市場関係者からの意見では時間経過に伴う変色が見られないという点も大きな特徴として上がっていた。

色合いの良さは一般消費者からの人の目からもはっきりわかるくらいのようである。

血抜き効果2.食感がモチモチになる

水氷で締めた場合と、活け締めと血抜きをした場合の破断強度を比べると、活け締め血抜きした方が強いという結果になっていた。

血抜きしていない場合と比べて平均1.5倍以上の破断強度で、水氷で締めたカツオと同じ破断強度に落ち着くのは144時間後だったとのこと。

つまり、釣りあげてから6日間は活け締めして血抜きした方が歯ごたえが強いということになる。

また、この表現だけだと「身が固いだけか」と誤解を生みそうなので官能検査の結果からも引用すると、「モチモチしている」感じになるらしい。

そして市場関係者、一般消費者のどちらからも「食感が優れている」という評価を得ている。

血抜き効果3.生臭さが消える

官能検査からの主要な回答を見ると、「カツオ特有の臭いが少ない」または「臭いがない」「臭いにおいて優れている」とあげられている。

つまりカツオのあの生臭さがかなり少なくなるということだ。

カツオの臭いをカツオらしさと感じるかどうか

一方で産地市場関係者からは「脱血カツオはカツオらしくない」という意見もあったようだ。

これが血抜きしたカツオに対する否定的なニュアンスなのかまでは書かれていなかったが、個人の嗜好や慣れ親しんだものに対する意識の現れかもしれない。

カツオの臭いは血と脂の共存によって発生する

「脱血処理がカツオの臭い成分に及ぼす影響」では、血抜きをした場合としない場合におけるアルデヒドとアルコールの発生量に関して検査を実施している。

カツオの臭い成分であるアルデヒドとアルコールは血と脂質が共存することで生成され、この生成量は時間経過が長いほど、また血の濃度が高いほど多いという結果になった。

つまり、カツオの臭い成分は血抜きをすることで抑制される。

そして血と脂質が共存した状態での時間経過も臭い生成量の1要因となっていることから、釣り上げた後は迅速に血抜きをした方が良いと言える。

カツオの血抜きを効率的に実施する方法は「エラ上部の延髄切り」

今回参照した研究結果では、カツオを取り込んでからどのような血抜きをすると効率的なのかについても検証していた。

複数の血抜き方法を試していたが、その中でも特に多く血が抜けていた方法が2つあった。

  1. エラ上部への切りつけ(延髄切断)と尾の切断
  2. エラ上部への切りつけ(延髄切断)のみ

尾の切断まで実施した場合は脱血率3.3%、エラ上部への切りつけのみの場合は脱血率2.9%。

この2つで比較するなら尾の切断までやった方がより血を多く抜けるが、揺れる船上でそこまで丁寧に扱えない事もある。そのため、現実的にはエラ上部への切りつけが出来れば脱血方法としては良いのでは、と文献では述べられている。

確かに延髄切りは釣りにおける一般的な締め方の一つでもあり、馴染みがある人も多いとはず。

それに尾を切断するとちょっと見栄えがなぁ…というのもちょっとある。

何より官能検査で延髄切りだけのカツオでも十分効果が出ることは分かっているので、文献の通り、味を究極に求めないのであれば延髄切りだけにしておくのが効率的かもしれない。

カツオは神経締めした方が早く身が冷える

神経締めの効果といえば、魚体が暴れることによるATP消費を防止する、死後硬直を遅らせることは有名(多分)だ。

だが研究によると、延髄切りしただけのものよりも、ワイヤーを使った神経抜きまで実施した方が魚体自体が早く冷えるという結果が明らかになっていた。

残暑の船上ではまだ温度に気をつけなければならない中、身が冷えやすいというのは鮮度保持の観点で大きなメリットだ。

カツオの活け締めの順番は脳破壊→血抜き→神経抜き

今回参照した論文では延髄切りしてから血抜きをし、そのまま官能検査を実施していた。また、神経締めの効果を確認する時は血抜きが終わってから神経抜きをしていた。

ということは、延髄切り→血抜き→神経抜きの順序でカツオの活け締めはしっかり効果が出るのでは、と考えている。ただしこの方法だと最初にピックなりで頭に穴をあけていないので、神経抜きをするためには尾を切断することになるかも?そうするとちょっと見栄えがね…

僕は釣った魚の見栄えは大事にしたい派、脳もちゃんと破壊しておいた方が良い気がする派なので、この順序で活け締めをしようと思う。

  1. 延髄切りではなくまず脳天締め(眉間からピックを脳に刺し、脳を破壊する)
  2. エラ上部を切りつけ血抜き
  3. 最後に頭からワイヤーを通して神経抜き

ちなみにこの順序、実は漁業関係者に神経締めについてレクチャーをしているウエカツさんが提唱している方法と同じ順序なのだ。だからこそこの締め方に妙に自信が持てている。(笑)

ウエカツさんの神経締めレクチャー動画は超参考になるので、時間のある時に見てみるのがオススメ。

まとめ

今回参照した研究論文では、このようなことが明らかにされていた。

  • 血抜きしたカツオは血抜していないものより色合い、臭い、食感(味)において優れている
  • カツオの臭いは血と脂質が共存することにより発生するので血抜きは臭い低減に有効
  • 神経締めで身が早く冷える
  • 効率的に血抜きをする方法の1つとして延髄切りが有効

ネット上ではカツオを血抜きしない方が美味しいとか、血抜きするならそのタイミングはこことか、様々な意見が出ているが、釣り人の意見の多くは経験則や個人の嗜好から来ている可能性を否定できず、そんな中、科学的に血抜きの効果を検証した研究結果は個人の思いに左右されないものとして重要な根拠になると思う。

ということで、カツオを釣ったらすぐにちゃんと血抜きをしたほうがきっと美味しい!!

…効果がどれほどなのか試してみたい気持ちがムクムク湧いてきてるので大漁だったら1匹だけ氷締めにして比較してみようかな…

関連:カツオの脳天締めの位置

後日釣りに行ったがぶっつけ本番でカツオを脳天締め→血抜き→神経抜きというのは難しく結局延髄切りで処置をした。

カツオの脳の位置を正確に知らなかったためうまく脳天締めできなかったので、釣りあげたカツオを使って、外側からどこを狙えば脳を一撃できるのかを調査した。

その記事はこちら。カツオ頭部の表と裏から写真を撮り、合成して脳の位置を見られるようにしているので、これから初めてのカツオ脳天締めを考えている方には参考になるかもしれない。

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