イサキを7日目まで熟成させて食べてみた
伊東のイサキは軽く寝かせた刺身が絶品の記憶が強い
今までカイワリ、金目鯛、カツオ、石鯛といった魚の熟成に挑んできて、魚を数日寝かせて美味しいね!という感じは分かってきた。
ただ、「3日寝かせれば美味しい」というのは経験的に分かってきたんだけど、「熟成」という言葉でイメージされるような美味しさというのとはちょっとまだ違うのかな?という感覚を持ってる。
そこで今回のイサキ!
8匹ほど釣れたことだし、大きめのものは津本式脱血で徹底的に血を処理したうえで7日間の熟成にチャレンジ。
釣り上げた翌日から1日ずつ刺身で食べていき、味わいがどうなっていくのか検証してみた。
昨年は澄潮に悩まされた伊東初島沖のイサキだったけど、数日寝かせてお刺身で食べたら驚くほど美味しかったのは今もしっかり覚えてる。イサキは寝かせてポテンシャルが発揮されやすい魚な気がするので最初から期待は大きめ!
今回食べ比べたイサキたちのサイズや熟成方法
使用したのは計7匹。それぞれ締め方、寝かせ方、サイズが違うのでここで整理しておく。
1日目に使用したのが最小サイズでエラを切り付けて活け締めした。2日目以降のイサキは脳天締め→神経抜きのワイヤー→エラ切りの順ですべて処理している。
寝かせ方は3種類。エラワタウロコをとって冷蔵庫に入れたもの、さらに真空氷温室にいれたもの、そして津本式脱血を施して真空氷温室に入れたもの。津本式脱血をしたイサキはウロコは取らず、水気をとってグリーンパーチに包んだ後ビニール袋で真空状態にした上で真空氷温室で寝かせている。
日数 | サイズ | 締め方 | 寝かせ方 |
1日目 | 小型(約18cm) | エラを切り活け締め | エラワタウロコをとって冷蔵庫 |
2日目 | 小型(約23cm) | 脳天締め→エラ切り | エラワタウロコをとって冷蔵庫 |
3日目 | 中型(約23cm) | 脳天締め→エラ切り | エラワタウロコをとって冷蔵庫 |
4日目 | 中型(約23cm) | 脳天締め→エラ切り | エラワタウロコをとって氷温冷蔵 |
5日目 | 中型(約25cm) | 脳天締め→エラ切り | エラワタウロコをとって氷温冷蔵 |
6日目 | 中型(約28cm) | 脳天締め→エラ切り | 津本式脱血→エラワタ→氷温冷蔵 |
7日目 | 中型(約28cm) | 脳天締め→エラ切り | 津本式脱血→エラワタ→氷温冷蔵 |
熟成1日目(釣った日の翌日):脂のりきらず?
冷蔵庫に置いていた小ぶりなイサキをピチットシートで脱水して食べてみた。
感想:パンチが足りない
そもそもイサキは身が柔らかめな魚な気がするが、歯ごたえは鮮度が良いだけあって良い。軽く脱水したためか旨味もしっかり感じられる。
臭みはもちろん全くない。
釣った翌日の刺身としてはかなり美味しいのではないかと思うが、何か足りないんだよなー。そういえばこのイサキ脂が全くのってないぞ。そのせいか?
旨味にしてももっと前に出てきて欲しいし、脂の美味しさも無いしで、、どうも微妙なお刺身だな~。
うーん、、もちろん美味しいんだけどね。なーんか物足りない。
熟成2日目:イサキらしい美味しさ!
同じく小ぶりのイサキを軽く脱水して食べてみる。1日目との変化はあるのか・・・?
この日使ったイサキはこんな感じ。ウリボウではなくなっているもののまだまだ小型。だけどさばいてみると脂がのり始めているのが分かる。これは期待できそう!
半分は炙って冷や飯に乗せて食べてみた。イサキ丼。
感想:実に美味い!!
皮を引いた方も脂がのっているためか1日目で感じなかったパンチの無さは解消。歯ごたえは柔らかいものの気になるものではなく「イサキはこういう魚なんだな」というイサキらしい美味しさを味わえる。旨味も十分出てきてるし、美味しい魚だなーイサキって。。
炙ってみた方は炙った皮の香りが出て脂の美味しさも感じやすくなり、夏を味わってる感じ。薬味と合わせると涼しげな風味も重なってまさしく旬を食べている贅沢感を味わえる。
熟成3日目:寝かせた旨味が出てきた
冷蔵庫で寝かせているイサキを使用。サイズは2日目と同じくらいのやや小型のもの。
これまでの経験から3日目は「鮮度が良くて美味しい」から「寝かせた美味しさが出てきたかも?」に変わる目安の日数だとなんとなく感じている。
白身系の魚はこのあたりから旨味が強くなってくることが多い。
感想:あぁ、これこれ。やっぱりこうなってくるよね!(美味しい!)
身の柔らかさが増してきていよいよ寝かせた魚っぽくなってきた。変な臭いは無し。味わいは2日目までとやや異なり、少し複雑になってきたような。醤油との相性が良くなってきたかな?と感じる。
そして数切れ刺身で食べた後は水なますに・・・!!実家の方から香り高いきゅうりが届いたし、ちょっと刺身食べ続けるのも飽きてきたのでw
水なますはきゅうりの香りとともに食べるのが至高。それくらい薬味としてのきゅうりの立ち位置が重要だと思っている。魚はイサキでもアジでもいけるので鮮度の良い美味しいきゅうりが手に入ったら必ず食べたいお気に入りの一品。
熟成4日目:あまり美味しくなくなった…?
氷温室で寝かせているイサキを使用。
感想:なんか風味が抜けてきてる?
家族の「焼いたイサキ食べたい」に負けてほぼ一匹をムニエルにしてしまった・・・。。それでもさばいているときに2切れとっておき、醤油をつけてちょろっと食べることができた。
ん?なんか3日目くらいまであった風味の良さがどことなく抜けてきてるような・・・?食感は相変わらず柔らかく、臭みもほぼ出ていない。旨味も十分感じるんだけど、それにしてもなんだか今日の方が美味しいかと言われると昨日の方が美味しかったような気がする。
不思議だ。
旨味は十分あるけど風味のようなものが無くなったように感じる。
熟成5日目:熟成への道が見え始める…!!
氷温室で寝かせているイサキを使用。(昨日とは別の個体)
感想:4日目よりも美味しい!!
正直安心したw
相変わらず臭みは無く、「ザ・寝かせた魚」といった美味しさが出てきたのが分かる!食感は4日目よりやや柔らかくなっているが嫌な感じは全くない。十分寝かせただけの旨味と気持ち香りも変わってきているように感じる。
このあたりからなら「熟成した美味しさ」と言っても良いかも。
そしてこの感じだと明日津本式脱血を施したイサキがあまり変わらないようなら思い切って9日目くらいまで期間を延ばしても良いかもしれない。
・・・というかイサキってかなり日持ちする魚なの?全然劣化してる感じしないんだけど。
熟成6日目:明らかに風味が変化!ここからが熟成か?
津本式脱血の真空熟成のイサキを使用。
感想:明らかに今までと別ものの美味しさが出てきた!!
おおおおおお!!!!!
5日目とはまた別の美味しさが出てきた。ここからがようやく「熟成」というイメージにそぐわない味の領域な気がする!
食感は5日目と変わらずだが旨味、風味ともにマグロの赤身に近い味わいを伴ってきた。イサキは白身の魚なのになぜこんな別の魚の刺身の様な感じになってきているのか不思議・・・。
刺身も良いけどこれなら酢飯と合わせてみたいので、明日は寿司でも食べてみようと思う。
熟成7日目
津本式脱血の真空熟成のイサキを使用。
感想:熟成魚としての美味しさがやや増したかもしれない
これで最後のイサキだったので超美味しいことを期待してたんだけどまさかの脂が全くのってない個体だったのでパンチは弱めだった。
食感は良い感じ。柔らかすぎることも無く美味しい。風味や旨味は6日目とそんなに変わらないかやや増したかな、というくらい。変な臭いはせず。ただ、一か所釣り上げたときに打ち付けてしまったのか打ち身のようになっている部分があり、そこだけやや水の臭いのようなものが少し感じられた。わさびや醤油を付ければ気づかないレベルのほんの些細な臭いだ。
そして握り寿司でも食べてみた!!
折角最後のイサキだしね!マグロのような味わいがのってきているので、酢飯との相性も良いはず!
と思って普通の握りと皮付き炙りの握りの2種類で行ってみたものの・・・
脂がのってないので炙りはそこまで美味しい!と言うほどじゃなく、そしてバーナーで炙ったときに炙らない方にもちょっと火が入ってしまい半生みたいな感じになりつつ・・・
うーん、、いや、炙らなくて良いな。
握り寿司は炙らない方が美味しいわ。
イサキは皮目が美味しいイメージが強かったので炙らない方が美味しく感じられたのはちょっと驚き。やっぱり炙りは脂がのってないとそこまで効果を発揮しないのか。
イサキと言えども脂がのってなかったらそのまま食べるのが良さそうってことだな。。
熟成とは関係ない発見をしてしまった。
まとめ
今回はイサキを釣った日から最長7日目まで寝かせて刺身で食べ比べてみた。
結果、以下2点のことが分かった。
- 鮮度の良い美味しさと寝かせて味がしっかりでてきた美味しさを味わえるのは2~3日目
- 「熟成」というイメージ通りの味にはっきりと変わるのは6日目以降。
6日目以降の味わいと2,3日目の味わい、どちらも別方向の美味しさを持っていて甲乙つけがたいが、結構人の好みでどちらが好きか分かれそうだな、と思う。
正直「イサキらしさ」を感じられるのは2,3日目の方だった。6日目以降は今まで食べていたイサキとちょっと違うのでこれが「イサキ」と認識できないというか、食べ慣れていないので評価に困るというか、何か今まで認識していたものと別物が出てきたので処理しきれずにいるところだ。
ただ、津本式の仕立てた魚を出している寿司屋では7日イサキや16日イサキを出しているようなところもある。なので今回の6日目から変化した熟成魚の味わいが今後一般的になっていけば、長期熟成のイサキでも「おお、イサキだね!」となる日が来るかもしれない。
それにしても16日は腐敗しないか怖くて実践できないが、イサキは少なくとも7日目まで生で食べられることが分かった。そして長期間生で食べるための技術を僕が会得できたということも分かったのはうれしい。
次の釣り物も1週間ほどはしっかり寝かせて食べて味わいの変化を調べてみたいと思う。
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