イサキの餌に「パワーイソメは無い」と断言できない
6月イサキ釣りまであと1週間ほど。仕掛けづくりに新調したクーラーのメンテに余念がない今日のこの頃。
そんな中、友人から「このエサ使ってみようと思うんだけど!!」と連絡が入った。
へー、イサキ狙いでオキアミ以外も使えるんだー、と思いながら何を使うのか見てみるとパワーイソメ・・・↓コレ
いやいやイソメはさすがに食べないでしょw
アジならイソメで狙うことも多いから釣れるだろうけどイサキはどうなの!?釣れなさそうだなー・・・
いや、でもイカ素麺みたいなやつでイサキ釣れるってのも最近なんかの記事で読んだしな、イソメもいけたりするのかなー。
そもそもイサキって普段何食べてんのかな。もしかして特餌とかあるんじゃね?
あれ、イソメも意外と普通に食べてたりして・・・
よし、イサキの食性を調べてみるか!!
ということで、脊髄反射的にイソメは釣れないでしょwと反応してしまったもののイサキが何を食べる魚なのかをちゃんと調べてみないことには何も言えないなぁ、、と思い直した。
今回はイサキの食性に関する論文をベースに、どのようなエサであればオキアミでなくとも狙えるのかを考察してみた。
この記事はこんな方向け
- イサキの特餌を何にしようか迷っている
- イサキの餌は何が良いのか根拠を持って調べたい
- 大型が釣れる餌は無いの?いつもアミエビばかりで飽きたんじゃー!!
参考文献
イサキの食性に関する調査研究を行った、今回の目的にドハマりな論文を発見!!今回参考にした文献は長崎と三重のイサキに関して調査・研究したものだった。
- 松宮義晴,高橋勝宏. 平戸島志々伎湾におけるイサキの食性. 西海区水産研究所研究報告 1983
- 木村清志. イサキの資源生物学的研究. 三重大水産研報 1987
「平戸島志々伎湾におけるイサキの食性」では1975年から1980年にかけて漁獲されたイサキの胃の内容物を調べ、イサキは何を食べているのか、また何かしらの傾向があるのかを調査している。
「イサキの資源生物学的研究」でも、熊野灘沿岸で漁獲されたイサキに対し胃の内容物調査や、胃内容物の減少速度実験、捕食・消化器官の形態観察などを実施している。
研究結果から見えてきたイサキの特徴的な4つの食性
①イサキの主食は魚類と甲殻類
イサキは基本的に魚類と甲殻類が主な餌だと分かった。
特に20cm~30cmのサイズのイサキが多く食べているのはアミ類、ヨコエビ類、魚類のようだ。
三重県のイサキでは1年を通して、魚と甲殻類で食事の80%を占められていたという結果が出ているし、長崎の調査でも同様にイサキは魚類と甲殻類を主に食べているされていた。
長崎の調査では5月と7月で食べている餌の個体数を検査して食べている餌の割合を出している。調査結果を見てみると、↓のように食べているものは魚類と甲殻類しか見当たらない。
5月・・・ヨコエビ類が結構目立つ
7月・・・アミ類と魚類が食べているものとして大半を占めている
②サイズによって食べる餌が変わっていく
ここで面白いのが、イサキはサイズによって食べる餌の割合が変わっていること。
餌の個体数による比較では、7月の16cm~22cmのイサキはアミ類を最も多く食べている。そして、22cm~28cmのイサキになると食べているものの半分ほどを魚類が占めるようになる。
長崎の調査は餌の個体数だけではなく、餌の重量も調べていた。重量の割合でみると、5月の16cm以上のイサキではおよそ90%が魚類を占めており、7月は16cm~22cmのイサキでは50%以上がアミ類、22cm~28cmのイサキでは50%以上が魚類となっていた。
イサキは大型化していくにつれて、7月はアミエビ的な餌から魚類をメインで捕食するように転換していくようだ。
魚類って具体的に何よ?
ところで「魚類」って言っても超幅広い。イサキの餌としての魚類って何なのか。今回参照した文献には以下のように書かれている。(一部省略)
胃中の魚類のほとんどはカタクチイワシ(体長5cm以下のシラス)であった
松宮義晴,高橋勝宏. 平戸島志々伎湾におけるイサキの食性. 西海区水産研究所研究報告 1983
「キビナゴ、マイワシ、カタクチイワシなどのイワシ類が年間を通じて多く捕食されている。これらのイワシ類はシラス期仔魚のころから捕食されている。また、マアジやサバ属の魚類は主として春に捕食されている」
木村清志. イサキの資源生物学的研究. 三重大水産研報 1987
つまり、魚類≒シラスと読み替えるのがオススメ。
③イサキは昼と夜でメインで食べる餌が異なる
イサキは他の魚と同様に餌に日周性を持っている。昼と夜とで食べる餌が変わる、ということ。
これも長崎の調査によるものだが、昼間には魚類をメインに食べているが夜にはアミ類やヨコエビ類などの割合が増加することが分かった。
1歳魚以上の大型魚は昼間には空胃個体が過半を占めるが、魚類を専食している。夜間には魚類のほかアミ類、ヨコエビ類、多毛類、貝虫類なども摂餌するようになる
松宮義晴,高橋勝宏. 平戸島志々伎湾におけるイサキの食性. 西海区水産研究所研究報告 1983
ただし、考察のところで、「昼と夜で胃の内容物が変化していることの原因は餌の生態によるものではないか」と書かれている。
イワシは一般的に昼に濃密な群れを形成すること、アミ類やヨコエビ類は夜に活発に活動することから結果的に昼は魚で夜は甲殻類が多く食べられているのでは、ということのようだ。
イサキが食べる餌を選んでいるのではなく、食べられる餌が昼夜で異なっているだけということであれば、イサキは昼でもオキアミで釣れる事に対して説明ができる。
④小型のイサキの方がお腹が減りやすいかも
三重の調査では胃の内容物の減少率を実験していた。
それによると、水温が高いほど胃内容物減少率は大きくなること、そして小型魚は大型魚に対してて胃の内容物減少率が高いのではないかと考えられる実験結果が出ている。
また、別の研究でニシマガレイでは小型魚ほど胃内容物減少率が高く空胃になる時間も短いことが報告されており、イサキに対してもこの傾向は当てはまるのかもしれない。
食べるものが少ないから消化も早い!みたいな感じか?違うか・・・
イサキを釣るならオキアミとシラスがベスト?
二つの文献から分かったことから、イサキを釣るための餌は何が良さそうなのか考えてみる。
具体的には、以下のような条件を満たしているほど魅力的!
- 餌取りなどの外道に取られにくい
- 大型が釣れやすい
- よく釣れる
定番のオキアミは万能選手
まずは定番のオキアミ。剣先沖や伊東でのコマセ釣りでは一般的に使われている餌だしイサキの主要な餌であることは間違いないことが分かったのでオキアミを餌に使うというのは間違いの無い定石とも言える。
コマセに同調させれば同じ種類の餌がふわふわしているようにイサキには見えるのでコマセを使うときの釣り餌としてはド定番。
コマセ、と言うキーワードでは、コマセを撒きすぎるのは止めるべしというよしひさ丸でのアドバイスを思い出す。釣り船では「イサキはすぐにお腹いっぱいになってしまうから撒きすぎは止めた方が良い」と聞いた。
今回調べた論文では「小型の方が大型よりお腹の減るスピードがはやいかも」という考察がされていた。大型の方が胃袋が大きいはずなので一概には言えないが、コマセを撒きすぎることで「小型のイサキしか釣れなくなる」という可能性もありうる。
そしてここでもう一つ、釣りならではの事情を踏まえて考えたい。
イサキ釣りにはカワハギやウマヅラハギを代表とするエサ取りが存在する。コマセが効いてくるとエサ取りが現れ、オキアミなど柔らかい餌はすぐに取られて空針になってしまうのだ。
つまり、オキアミの弱点は餌取りに取られやすいということ。
オキアミは大型でも食べている餌なのでオールマイティなイメージがあるが、餌取りに狙われるとすぐ取られてしまうのでコマセが効いてきたら別の餌への交換も考えた方が良さそうだ。
大型狙いならシラスがベストなんだけど・・・
では、大型のイサキを釣りたい時はどうすべきか。
イサキの食性に関する論文をもとにするなら、餌には魚、特にシラスを使うのがベストという回答が出てくる。
長崎のイサキの論文からはイサキはサイズが大きくなるほど魚類をメインの餌にする傾向がわかる。胃の内容物では5cm以下のサイズのシラスが確認されている。三重の論文でも魚類といえばシラスだった。
シラスは大型イサキの主食なはずなのだ。使わない手はない。
だが、シラスは間違いなく餌持ちが悪い。オキアミよりさらに餌持ち悪そうなので本当に食いが悪い時に大型を狙うための特餌として使うのが有効かも…。
大型狙いのシラスの餌持ち問題はイカとワームで解決!!
エサ取りの存在を意識すると、大型を釣りたくても柔らかいシラス一辺倒で狙うのは危険だ。
そこで思い出したのがイカ短!
よしひさ丸では餌取りが多い時にはイカを3mm×1mm~1.5mmに切ったものが餌持ちが良くて有効だという記事を見つけた。
このイカ短って、シラスの疑似餌なんじゃない…?
結構丈夫なので餌取り対策も兼ねて大型を狙えるシラスのルアーとしてイカ短はかなり有効な気がする。
そしてシラスの疑似餌というキーワードで、千葉方面で大型イサキ狙いで実際に使われている記事を見つけた。
大型狙いであれば「ワームバケのシラスタイプは試す価値あり。サイズは3、4号でカラーはピンクか白」と書いてある。
ワームのシラス!!
大型狙い=シラスのワームで釣れるという紹介は、論文による大型がシラスを食べていたという事実とも重なり、非常に説得力がある。
それにシラスのワームならイカ短と同様にエサ持ちは非常に良いはず。ルアーだし。
ちなみにワームバケのシラスタイプの3,4号はそれぞれ13mmと18mmだ。5cmの大型シラスではないが2cmサイズのシラスをイメージしていると考えられる。
ワームバケのシラスは3号(13mm)~8号(40mm)までのラインナップがある。長崎のイサキが食べていたシラスも最大50mmなのでどれを選んでも有効な可能性は高い。
ちなみに、千葉方面でのシラスワームの記事では細く切ったイカも餌として使っており、長めにカットすると大型が釣れると書いてあった。やっぱりイカも有効だということだ!!
長めとしか書いてないので具体的な長さは分からないが、長崎のイサキに準ずると仮定すると、こちらもMAX50mmまでの長さでイカをカットすればよさそう。
まとめ:イサキの食性とどんな餌が良さそうか
今回はイサキの食性に関する論文から、餌として何が有効なのかを考えてみた。
まず、イサキの食性としては、4つの特徴が認められる。
- 主食は魚類(シラス)と甲殻類(アミ、ヨコエビ)
- 大型化するに従い捕食対象として甲殻類より魚類の占める割合が大きくなる
- 昼は魚類中心、夜は甲殻類中心に捕食している
- 食べるシラスは最大50mmまで
そしてイサキ釣りに必ず現れる餌取りの存在も踏まえると、餌取りによる攻撃を回避しつつ大型のイサキを釣るならイカやシラスワームといったシラスの疑似餌が有効。
そしてサイズは10mm~50mmくらいまでが有効!!
あーすっきりした!!
次の釣りにはシラスワームとイカ素麺、必ず持っていこう!!
(イソメは持っていかなくてもいいんじゃないかな・・・)
コメント